若者が地元を離れる理由と戻る理由 ~アレルギーとノスタルジー
田舎から若者が出て行く理由を「仕事がない」とか「都会に憧れる」といった表面的なことだけで片付けるのは、なんだか味気ないですよね。
もっと根っこの部分に踏み込んでみると、「地元」という存在そのものが若者にとって矛盾を抱えた複雑な対象なのかなと思うのですが、皆さんはいかがでしょうか。
今回は、若者が地元を離れる心理を「地元アレルギー」、そして地元に戻る心理を「地元ノスタルジー」として、それぞれの背景にある要素を掘り下げていきたいとおもいます。
なんだか固そうなイメージですよね。でもきちんと考えなくてはいけない問題なので、今日もお付き合いくださいな。
なぜ若者は田舎を嫌いになるのか
田舎で生まれ育った若者が、ある時期になると地元に対して耐えがたい違和感を抱くことってよくあります。
一種の田舎に対するアレルギー反応のようなもので、この現象は特に思春期から20代前半にかけて顕著になりがち。
地元の風景や人々、文化そのものが自分を縛るように感じられ、「ここにいるのは自分じゃない」と考え始める。
なぜそのように考えてしまうのかというと、第一に、田舎の世界の「狭さ」がある。
田舎は、物理的な狭さもそうだが、心理的な狭さが特に大きい。
地元は知り合いが多いため、どこへ行ってもだれかと会う確率が高いし、なにかと噂話がすぐに広まり、自分の行動が見張られているような感覚に陥りがちです。
都会に比べて人口が少ない分、地元での人間関係は密接すぎるということですね。
これが心地よいと思う人もいるが、若者にとってはこの閉塞感が耐え難いものになることも多いと思います。
次に、「変化のなさ」。
田舎の風景や生活スタイルは、都会に比べると圧倒的に動きが遅い。
同じ道、同じ景色、同じ人間関係がずっと続いていくように感じられ、それが安心感を生む一方で、若者にとっては「このままここにいたら、何も変わらないのではないか」という恐怖の対象になります。
「この町での未来」が想像できないと感じた瞬間、都会の多様性や刺激的なイメージがまぶしく見えてくるので、こんなところ(田舎)に居たくない!となって、町から出て行くんですね。
さらに、これは少し極端かもしれませんが「夢を持つことが許されない空気」も、若者が地元アレルギーを引き起こす原因の一つ。
田舎では、地元を出ていこうとする人に対して、冷たい視線が向けられることがあります。
「そんなことしてどうするの?」「地元で堅実に生きるほうがいいじゃない」という言葉が無意識のうちに若者を縛り、夢を語ること自体が空気の読めない行為とされる。
これに耐えられなくなった若者は、「この場所にいる自分」を捨てたいと、強く思うようになるということですね。
こうした要素が重なることで、田舎で育った若者は地元に対して「アレルギー反応」を起こし、新しい世界(都会)に出ていく。
決して田舎が悪いというわけじゃないんですけどね。
田舎の閉鎖的な空気と、若者特有の自己実現欲求がぶつかり合った結果として起きる自然な反応です。
なぜ若者は地元に戻りたくなるのか?
一方で、一度地元を離れた若者たちの中には、ある日突然「地元に帰りたい」と思うようになる人もいます。
これは、地元アレルギーが時間とともに薄れ、逆に地元の良さが記憶の中で美化される現象と言っていいでしょう。
このノスタルジーは単なる「懐かしさ」だけではなく、都会での生活との対比の中で生まれるものでもあります。
都会での生活が長くなると、田舎の自然や静けさが恋しくなる瞬間が必ず訪れます。
都会の喧騒や人間関係に疲れたとき、地元の広い空や静かな夜を思い出すことがある。
都会ではすべてが便利ですが、その便利さがストレスを生むこともあるじゃないですか。そんなとき、田舎の「何もない」が、逆に贅沢なことのように思えてくるんですよね。
また、地元での人間関係の温かさに気づく瞬間もあるでしょう。
都会では人と人との距離が遠く、隣に住んでいる人の顔も知らないということが普通ですが、田舎では近所のおばちゃんが野菜を分けてくれたり、顔を合わせれば必ず挨拶をするような距離感がある。
都会の匿名性に疲れたとき、この人間味ある関係性が恋しくなるということです。
さらに、都会での生活を通じて成長した自分が、地元で新しいことを始められるのではないかという期待感もあると思います。
一度外の世界を見たことで、地元での可能性が違う形で見えてくる。昔は「何もない」と思っていた場所に、新しい価値を見出せるようになるんですよね。
地元を離れることも戻ることもどちらも正解
若者が地元を離れる理由も、戻る理由も、どちらも自然なことだと思います。
地元を出ることでしか見えない世界があるし、地元に戻ることでしか気づけない価値もある。
離れることも戻ることも、どちらも人生における大事な選択肢の一つであり、それぞれのタイミングでどちらを選ぶかは人それぞれです。
重要なのは、地元を出ることや戻ることを、成功や失敗のように判断しないこと。
地元を出たからと言って偉いわけではないし、戻ったからと言って負けたわけでもない。
それは、自分がどう生きたいかを模索する中での一つの選択にすぎませんから。
そして、どんな選択をしたとしても、生まれ育った場所はいつだって自分を受け入れてくれます。
地元は、出ていく自由も、戻る自由も、すべて包み込んでくれる懐の深い場所ですからね。